2010年11月24日水曜日

ミミズ




フラスコの中には、俺が生きていける分だけの酸素と水、


それから塩と缶詰があればよい。


 


俺はまず、起きたら食べる。


そして考えて、考えて眠ってしまう。


俺は再び起きる。食べる。


 


考えて、考えて疲れて眠ってしまう。


来る日も、来る日も、俺は目が覚めたら、考えて、考えて煩悶する。


そして眠る。


 


俺は、きょうも起きなくてはならない。


俺は、きょうも食べなくてはならない。


俺は、きょうも考えなくてはならない。


俺は、きょうも眠りにつかなければならない。


 


限られた資源と食料を与えられて、この小さな空間に


どうして、俺は生きなくてはならないのだろうか。


 


俺は生きる。


その代り食べたくない。考えたくない。目覚めたくない。


俺は死なない。眠りつづけるのだ。


 


俺はガラス張りの向こう側を拒絶した。


 


俺は眠り続けるのだ。


フラスコの口の穴から恵まれた、僅かな土のなかで、


俺はひたすら眠り続けるのだ。


 


ある日、ふと思った。


俺はミミズになってしまったのか、それともミミズだったのか。


 


時折、細長い肢体をニューバネビビロバーン、波打ちながら


俺は、もう何も考えない。


 


ガラス張りの向こう側からは、もう一人の俺がニューバネビビロバーン


「こいつ まだ生きていやがるぜ」


冷笑している。


 





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