小学生の頃、今は亡き父と二人で、大阪から京阪電車に乗って、京都の神社仏閣巡りをするのが楽しみだった。
毎回、京都で夕食を済ませてから帰阪することになっていたので、父はよく、四条川原町にあったカレー料理の専門店『ジャワ』に僕を連れて行ってくれた。
このレストランにはカレーライスのフルコース・メニューがあって、前菜とスープの次に魚料理がサーブされる。その後で、いよいよメインのカレーライスの登場となる。
コースは四段階あって、父はいつも下から二番目の八百円のコースを注文した。僕はカレーといえばインドだと思っていたので、ジャワ・カレーといわれてもしっくりこなかった。
だが、それ以来、父と一緒に何回かこのレストランに通うようになった。それは言うまでもなく、『ジャワ』のカレーの味にすっかり魅了されてしまったからだ。最初に食べたカレーがあまりにも旨かったので、ぼくは本当に頬っぺたが落ちてしまうのではないかと心配したぐらいである。
それから何年か経って、ハウス・ジャワカレーのCMがテレビに流れるようになった。京都の『ジャワ』とはすっかり疎遠になってしまっていたが、今度は母が、家庭でジャワ・カレーを作るようになった。母が作るジャワ・カレーの中身は、入念に炒めた狐色の玉葱をふんだんに使い、カレー用の肉の代わりに、挽肉がどっさりと入っている。
だしの良く効いた和風ジャワ・カレーは、とっておきのおふくろの味なのである。
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