2011年4月2日土曜日

片 恋




初めてあなたの手にふれたのは


サンタモニカの海岸通り


陽光にあふれた手つなぎの道は


思い出の彼方でまどろんでいる


 


夏がはじまり


ジャカランダの木の下で佇んでいると


きょうも あなたのことばかりが


洋梨の香りをたずさえて、潮騒のように騒ぎ立つ


海ツバメの羽毛のように身も心もときめいて


ぼくは勢いよく大空へと舞い上がる


 


ああ あなたに会いたい


ぼくの鳩尾(きゅうび)は


晩秋に回廊の柱の陰で朽ち果てた


北風に踏まれる茜葉のように


静かに燃えるだけ


 


青い月の光を帯びて


あなたの愛くるしい仕草は


水煙にかげるナイルの白百合


 


遠くから見つめていると


あなたの甘味な吐息を


ぼくの口許に感じる


 


ああ するとどうだろう


ぼくの胸はいたく張り裂けて


ビオラの弓弦(ゆずる)で


熱く激烈に弾き打たれる





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