2011年4月4日月曜日

食通の社長




日本の大手印刷会社と取引をしたことがある。度々専務が日本からアメリカへ来られる。名刺を見ると米国○○会社の社長と書いてあった。


二ヶ月に一度の割合で、日本から社員と共にやって来る。僕はコーディネートと、各会社へアポイントメントを取る任務を任されていた。


夕刻になって帰りの車の中で、社長は「新井さん、今晩は何処にするかな」と僕に聞く。今夜も何か美味しいものを、食べに行こう言う意味だ。


社長は業界切っての、食通として名がと通っていた。僕は毎晩、社長の舌を満足させるのに大変であった。ある晩、ビバリーヒルズの中華料理店『文記』(もんき)に案内をしたら、社長はえらく気に入れられた。


数ヶ月後に社長が来米された。また、『文記』に行きたいと言う。予約を今から入れなさいと言われた。社長は満漢全席が食べたいと僕に言った。僕は絶句した。


予約を入れる際に、満漢全席は出来るのか、僕はマネジャーに訊ねた。一人前700ドル、5日前から予約要、ミニマム4人、僕も楽しみだった。


当日は山海珍味が並んだ。ツバメの巣、フカヒレ、熊の掌、蛇、象の鼻etc。中国の年代物の酒、タックス、チップを入れると、一人前が1100ドル。


社長もご機嫌ようす、僕はようやく肩の荷が下りた。


 





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