2010年10月29日金曜日

スワヒリ語




和夫は海外旅行が趣味である。どうして海外に出掛けるのが好きかと言うと、特殊なマシーンを持っているからである。和夫は外国語が苦手である。そんな和夫が外国人相手に、すらすらと喋るのである。英語、フランス語、スペイン語、中国語、何でもござれである。


和夫は海外へ行くと、口元にマスクの様なものを付ける。マシーンである。その名も自動通訳機、マスクをかけて日本語で喋ると、瞬時にしてその国の言葉に訳される。


ある日、和夫は外国人の女性と恋に落ちた。これも自動通訳機のお陰だ。二人は結婚を誓い合った。正しく幸せの絶頂である。甘い新婚生活もいよいよスタートして、バラ色の人生を和夫は満喫した。


和夫は今晩、出張に出掛ける。和夫は夜遅くまで仕事をこなした。ホテルヘ帰る道すがらバーに立ち寄ることにした。元来、和夫は酒好きだ。この日はすっかり酔っぱらってしまいました。泥酔である。


どうやってホテルにたどり着いたのか、皆目見当がつきません。その夜、ベッドに倒れ込むようにして眠りました。朝起きて、はたと気づきました。自動通訳機が見当たりません。バーへ直行しました。朝早いので店は閉まったままだ。


夜になって自動通訳機を探しました。どこを探しても見当たりません。道を探しても。ホテルの部屋を探しても、もう、絶望だ。


出張先はブラジル。言葉が全く通じません。細君に電話を掛けるにしても、これまた言葉が通じない。和夫は途方にくれました。


兎に角、飛行機のチケットはあるので、国へ帰ろう。フランスへ帰ったら何とかなるさ。機中で、和夫は上着の内ポケットに腕を突っ込んだら、自動通訳機が出てきたではありませんか。和夫は、にんまりとほくそ笑んだ。自動通訳機が正常に作動するか試してみた。


日本語で喋ってポルトガル語になるか試してみた。何処かおかしい。壊れている。日本語で喋ってスワヒリ語になる。もう駄目だ。


細君はフランス語と英語だけだ。夫婦なのにコミュニケ―ションが取れない。どうしょう。和夫は自宅に到着した。和夫は細君にスワヒリ語で話しかけた。


最初は冗談かと思っていた細君。だんだんと険悪な表情へと変わって行った。暫くして細君もスワヒリ語で喋りだした。


細君は学生時代アフリカへ留学していたので、スワヒリ語は得意中の得意であった。ジャンボ!


新井雅之





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