2010年10月28日木曜日

思いで




毎日が暇だ。それでいて時間の経つのが早い。健康な時と比べて、読書量がかなり減った。


読みたくない。集中力がない。飽きっぽい。


情けない。最盛期にはひと月で五六百冊読んだのに。僕が日本にいるとき、出版社に籍を置いていた。本を読むのが仕事であった。出版社では文芸雑誌を発行していた。寄贈されて来る本を片っ端から読んだ。寝る時と食事の時以外は、本を読み続けた。そして文芸雑誌に書評を書くのだ。


往時、資料室を担当していた僕は、投稿されてくる詩や小説に添削を施すのである。あの頃が懐かしい。


年に2、3回、文芸人と交流があった。思い出深いのは、大阪天王寺の飛田遊郭『百番』に於いて、詩人の小野十三郎さんを囲んで、六人で座談会をやったことである。全員が詩人であった。


編集部は環状線寺田町駅、林寺町にあった。編集部へ向かう途中で、腹ごしらえをするのが習わしとなっている。行きつけの小さな中華料理店の暖簾をくぐると、僕に「きょうはどっち」と聞く。長年通っているが、僕はチャーハンと中華丼しか頼まない。


ここのチャーハンと中華丼、美味かったなー、アメリカへ来ても忘れられない味。今度、帰国したら一度訪ねてみたい。


僕は帰国するには自信が持てない。右半身不随であるからだ。周囲の人に迷惑がかかるから。そうなれば、チャーハンと中華丼が食べられない。難波の夢は夢のまた夢。


大阪へ帰ったら、行きたいレストランが沢山ある。心斎橋の『明治軒』、『プランタン』、千日前の『治作』、鶴橋の『宝海楼』、江坂の『民宝』、阪神デパート内の、『つるや』、曽根崎の『ゆかり』、他。


子供の頃によく行った、母の田舎である高知県にも行きたい。叔母と伯母が二人いる。もう、伯(叔)母達は不帰の客となってしまった。


この原稿が脱稿して、夕暮れどきに、僕は俳句を詠んだ。


「なつかしむ思いでキラリ秋の海」


 新井雅之


 





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