2011年6月1日水曜日

『花亀』




90年代初頭、リトル東京のホンダ・プラザに、天ぷら屋『花亀』があった。主人の職人は無口で計算高くない、商売が不得手な人物であった。女将さんは奇人である。


そんな二人が、店を切り盛りしているのだから、ご多分にもれず不協和音が轟く。店には何時も5歳の娘がいて、客から客へと戯れる。客は笑顔で対応するも、本心は迷惑だ。メニューには娘の写真が貼り付けてある。


天ぷらの味は、日本の天ぷら屋以上に美味しい。聞くところによると、東京の有名天ぷら店、一見さんお断りの店で修業したとか。


天ぷら油は、サラダ・オイルにゴマ油を少し入れて使う。関西では綿実油だけで揚げる。その方が美味しいと大将に告げると、2週間ぐらい経ってから、日本から綿実油を取り寄せたと、『花亀』の大将は僕に報告をした。


刺身定食もある。これがまた鮨屋の刺身よりも美味い。リーズナブルで佳味とくれば、繁昌しても、よさそうなものだが、店の雰囲気が悪くて何時行っても閑古鳥。


最後の常連は僕一人になった。2年余りで店をたたんだが、負債を抱えるも家族3人で、2週間イギリスで夢のバカンス。


それにしても、『花亀』の天ぷらは、超美味かった。今でも江美子と語り草になっている。





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