2011年6月12日日曜日

毛虫




毛虫


ギィヨーム・アポリネール/堀口大学訳


 


働くことは金持ちをつくる


貧乏な詩人よ、働かう!


毛虫は休なく苦労して


豊麗な蝶(てふ)になる。


 


 


 


堀口大学の訳詩の集大成とも言える『月下の一群』(大正14年刊)の中から、『毛虫』を鑑賞する。


 


僕は陋居の仕事場の壁に、この詩を拡大したコピーを、5年ほど前から貼り付けている。何故ならば、往時のアポリネールの情況と自分自身が、だぶって見えて来たからだ。


 


さて、『毛虫』は僅か四行の短詩であるが、二つの構成に分かれて成り立っている。即ち一行目と二行目が第1部であり、三行目と四行目が第2部となる。


 


第1部は貧困に陥った時の、自問自答である。それは詩を書く努力が、衆生世間に理解されないからである。けれども、生活していく為にはお金が必要なのである。


 


第2部は、詩人の魂はイマジネーションの美であって、決して物欲に溺れるものではないと謳っている。従って『毛虫』は、相克の哲理に煩悶するアポリネールの絶叫であるのだ。


 


巷では、『詩』など創らないで『田』を作れ。「あいつは詩人か、どうせ金がないのだろう。ジャニターの仕事でも世話してやれ」等と言われて来た。浮世では、詩人は肩身が狭いのである。





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