2011年6月3日金曜日

道楽




アメリカのフランス料理レストランは、僕の舌を満足させてくれない。趣向を凝らした盛り付けだけが豪奢(ごうしゃ)である。味の方は少しばかり不味だ。


日本ではフランス料理の超高級店に行けば、それなりに美味しい。だが、目の玉が飛び出るほど高い。


フランス料理は本場に限る。名の通った三ツ星レストランではなくとも、ブラッスリーでも僕の舌を満足させてくれる。


かつて僕がフランスへ頻繁に行っていた頃、モンパルナス駅の近くに男性が二人きりで、切り盛りしている食堂を見つけた。路地を入ったところで分かりにくい。そんな場末の食堂でさえ、舌鼓を連打した。


安価で美味いから、僕がパリ滞在中は、食堂『マリア』を贔屓(ひいき)にした。パリは至る所に、安価で美味しい食堂がある。


パリには美味しい惣菜店も充実している。帆立て貝のテリーヌとフォアグラのテリーヌを買って、パンとチーズとワインがあれば、安ホテルでディナーを楽しむことができる。


また、パリの総菜店のスモークサーモンは、度肝を抜かれるほど最高に美味しい。毎回LAに持ち帰ることにしている。


僕がフランスに出向くのは、敬愛するシャルル・ボードレール先生の研究が目的。ホテル・ソルボヌに投宿して、ソルボヌ大学の図書館に通う。モンパルナス墓地には、幾度も通った。ボードレール先生の墓の前で、何枚も写真を撮った。ボードレーヌの研究をしても、お金にはならない。早い話が道楽である。


僕が日本にいた頃は、文学極道であった。極道から道楽へ出世をしたものだ。同じようなものか?





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