僕が14歳の頃、大阪警察病院の神経科に入院していた時のこと。同じく患者で3歳年上の女性と、意気投合して行動を共にした。
夜、病院の屋上へ二人で足を運んだ翌朝、婦長さんに注意を促された。夜、男女が二人だけで屋上に赴くと、何か如何わしいことでもやっているのではないかと誤解されかねない。
14歳の僕は、大人って厭らしいことを考えるものだと憤慨した。二人は外出も自由にできる。病院の向かいにある喫茶店にも時々出向いた。看護婦さんに、二人が行動を共にしていないか悟られない様に、どちらかが時間をずらせて病棟に戻る。
ある晩、二人で屋上へと向かった。夜景を眺めているうちに、どちらからともなく寄り添った。彼女の愁いを含んだ瞳が僕を見つめている。彼女の瘦躯が僕の胸に収まった時、彼女は優しく瞼を閉じた。ああ、長いまつ毛が麗しい。
ファースト・キスは、レモンの味がすると聞いていたけれど、僕は甘くて酸っぱい、チェリーの味がした。
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