John ColtraneとJohnny Hartmanのサックスと歌を聴いていたら、プーシキンの詩を思い出した。
野末にのこる遅咲きの花は
あでやかな初花よりも愛(めず)らしく
はかない夢のよすがともなる
人の別れのときも
あまい出会いのときよりもふかく
こころにのこることもある
この詩の題は忘れました。
「会うは別れのはじめなり」とは、元々は仏教の言葉で『会者定離』(えしゃじょうり)と言う。時代には関係なく洋の東西を問わず、人間は出会う時の喜びよも、別離の傷心の方が深かいようだ。
谷崎潤一郎は書いている。「だれしも別離は悲しいものにきまっている。それは相手が何者であろうとも、別離ということ自身のうちに悲しみがあるのである」(『蓼喰う虫』より)
唐詩選の五言絶句の中に『人生足別離』の一句がある。これを「サヨナラダケガ人生ダ」と、和訳したのは井伏鱒二である。恬淡(てんたん)とした響きではあるが、中々味わい深い名訳である。僕はこの一句に、たいそう心が惹かれるのだ。
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