来る日も来る日も、男は眠り続けている ……
一日24時間の内の、3時間ほど男は起きる。一日の日課は食事をして仕事をするだけだ。だが、仕事をする時間は、少なくとも6時間から10時間もある。
実は、男には奇妙な特技があった。眠っている間に仕事をするのである。男の職業は小説家。眠っている間にストーリーを考える。組み立てる。推敲をする。起きたら、ひたすら書くだけである。
3時間ほどしか起きていられないから、遊びには行けない。原稿料と印税が貯まるばかり。男には趣味があった。B級グルメである。毎日出前を取っては食べる。
男には身の周りをお世話してくれるお手伝いさんいる。洗濯に掃除etc。原稿料は、お手伝いさんの給料とB級グルメでほとんどが消えていく。
ある日、男は消えた。行方不明ではない。死んだのでもない。異次元に移り住んだのだ。男はしまったと思った。男が移り住んだ17次元では、一日が十万時間ある。男はたかが3時間ほどしか起きていられない。
男はひたすら眠り続ける。眠っている間中、小説のストーリーが何本も完成する。3時間では書く時間足りない。男は17次元の主に直訴した。主からは、
「3時間も起きてはならない。死んでもいけない。ただひたすらに眠り続けろ」と言われた。
眠る男は、今日も眠り続ける。945億年も眠り続けている。その間、完成した小説は770億冊。書く時間を奪われた男は、17次元の主からかの呪いが解けるまで、永遠に眠り続けるだけ。
新井雅之
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